「カホール・ラバン」エッセイ集


67.新議長誕生

 1月9日、パレスチナにおいて自治政府議長を決定する選挙が行われ、アラファトが死んで以降、暫定代表を務めていたアブ・マーゼン(マフムド・アッバス)が62%という高い得票率で、新議長に選ばれた。

 各国からの選挙監視団が各投票所で選挙を見守った。カーター元米大統領やブッシュに敗れたケリー氏もパレスチナを訪れ、さらに選挙前には親パレスチナ派(自称・平和の使者)のリチャード・ギアがテレビコマーシャルに出演し、「将来を決める大事なことです。選挙に行こう!」と熱弁。

 アブ・マーゼン。1935年、イスラエル北部ツファットで生まれる。その後、周辺国で学び、モスクワに留学。パレスチナの首脳部に入り、オスロの立役者としても有名。実質上のナンバー2・・・。
 補足→ツファットはユダヤ教4大聖地の一つであり、中世からユダヤ人が住んでいる街である。恐らくツファット周辺のアラブ村の出身であろう。大学などで勉強したということは、難民でありながら相当の財力を持っていたことが分かる。第一、カネがなければ「学歴」だけでアラブ社会でのし上がることは出来ない。

 ま、それはともかく。
 この選挙が無事に終わったことについて、「民主主義選挙」だと世界は絶賛。アメリカやイギリスも「民主的将来への新たな変化を期待する」と祝福のメッセージを述べ、日本は63億円の緊急援助を決定。

 ふぅ。
 この選挙のどこがどう民主主義選挙なのだろうか。

 アラファトは存命中、「ライース(アラビア語で「〜長」)」と呼ばれていた。だが、彼が死んで以降、「ライース」ではなく、「シャヒード(殉教者)」と呼ばれるようになった。
 アブ・マーゼンの選挙活動のポスターは、このカリスマ・テロリストと一緒の写真や肖像が所狭しと飾られていた。
 この世に生を受けてこのかた、「殉教せよ!」と教え込まれるパレスチナ。全身に癌が回って死んだライースは「偉大な殉教者」。そしてその殉教者と一緒に写る立候補者アブ・マーゼン。
 暗黙の了解、いや、暗黙の圧力によって、いやでも何でも、アブ・マーゼンに投票することになる。

 いうなれば、洗脳選挙。
 これがパレスチナ的民主主義である。

 それにしても、パレスチナに63億円・・・。
 私は日本に税金を払っていないから文句を言う筋合いはないが、それにしても・・・。
 今度は誰のポケットに入るのだろうか。


(2005年1月10日 無断転記および抜粋・リンク禁止)